選挙を知ろう
投票率18歳>19歳!理由は「住民票」?
いきなりクイズ!
2016年の参議院選挙から投票できるようになった、18歳・19歳の投票率はどの県が最も高かったでしょう?
① 北海道
② 秋田県
③ 東京都
④ 島根県
⑤ 沖縄県
正解: ③東京都
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意外!地方の方が投票率が高いイメージなのに。
いやいや、そのイメージは必ずしも間違いではないよ。
【投票率】全国トップは長野県だけど・・・
2016年の参議院選挙の全体の投票率は54.70%。
都道府県別にみたTOP3は…
1) 長野県 62.86%
2) 山形県 62.22%
3) 島根県 62.20%
東京都は、第11位で57.50%だ。
でも、18歳・19歳の投票率だけで見ると、ガラリと変わる。
1) 東京都 57.84%
2) 神奈川県 54.70%
3) 愛知県 53.77%
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都市部が並んだね!
逆に、最も低いのは…
47) 高知県 30.93%
46) 宮崎県 33.61%
45) 愛媛県 35.78%
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どうして都市部の投票率は高くて、地方は低いの?
その理由は「住民票」だ。
投票率UPの鍵は「住民票」
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そもそも「住民票」ってなぁに?
「住民票」は、それぞれの自治体ごとに作成される「住民の記録」のこと。みんなの氏名や生年月日、住所などが登録されているんだ。
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その「住民票」が、選挙にどう関係しているの?
公職選挙法では、住民票がある自治体の選挙でしか投票できないと決められているんだ。だから、進学で親元を離れる際に住民票を移していないと、引っ越し先の選挙では投票できない。
10代の投票率が全国で3番目に低かった愛媛県では、18歳のうち、「高校3年生にあたる時期」※に生まれた人たちの投票率も出しているんだけど、その投票率は67.72%もあるんだ!県全体の投票率の56.36%よりも11.36ポイントも高い。いっぽう、「高校を卒業したとみられる」※18歳の投票率は31.22%、19歳は29.90%と全国的にも低かった。
※実際には高校に通っていない人も含む。生年月日で高校3年生相当と高校卒業相当を計算。
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高校を卒業したら、みんながみんな選挙に興味がなくなっちゃう…わけじゃないよねぇ?
そう、そういうわけじゃないんだ。
10代の投票率が地方で低かったのは、多くの学生が進学で親元を離れる際に住民票を移していなくて、投票しようと思っても実家が遠くて、できなかったからとみられるんだ。みんなが住民票をちゃんと移していれば、10代の投票率はもっと上がっていたはずだ。
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なるほど。…でも大学で都市部に行って一人暮らしをしても、私の場合、いつかは実家に戻るつもりだから、住民票は移さないと思うな。
でも、住民票を移さないと罰則もあるんだよ。
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えっ?
移さないと、5万円以下の過料?
住民票は特別な理由がない限り、引っ越しした日から14日以内に移すことが法律で定められているんだ。手続きをしなければ、5万円以下の過料に科されることもある。
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5万円!
でも、住民票を移したからといって、すぐに、引っ越し先の選挙で投票できるわけではない。住民票を移してから3か月以上経過しないと、投票できないんだ。もし、住民票を移して3か月経たないうちに衆議院選挙や参議院選挙があった場合は、前に住んでいた自治体でなら投票できる。
「不在者投票」という制度を使えば、実家に戻らなくても投票できるよ。
直前に住んでいた自治体から投票用紙を取り寄せて、投票する仕組みだ。
プロセスの簡単な説明
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うーん、面倒くさそう。
確かに、手続きが非常に煩雑だよね。では、なぜ住民票を移さない学生が多いと思う?
なぜ学生は住民票を移さない?
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んー。メリットがないよね。20歳になったら地元の成人式に出たいし…
住民票を移すと成人式に出られないってことは、ないと思うよ。
地元の自治体から成人式の案内は来なくなるけど、事前に連絡すれば、問題なく出られるはずだ。
このほか、保護者が子供の住民票を移させないというケースもあるんだ。なぜかというと、20歳になる前の月に、日本年金機構から「国民年金」の加入手続きの案内が来るんだけど、「子供には任せていられない」とか「案内が放置されても困る」といった心配から住民票を実家に置いたままにするという人もいるみたいなんだ。
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国民年金か。確かに難しそう。でも、そもそも住民票なんて意識したことなかったよ。
そうだよね。普通の高校生活を送っていて、住民票が必要な場面なんてほとんどないからね。
【現場リポート】松山市のアプローチ
この問題に対して危機感を持って対策に乗り出している自治体の一つ、松山市。
どうすれば住民票を移してもらえるか。若者の投票率UPに取り組んでいる高校生や大学生たちと、選挙管理委員会の職員とが協力してアイデアを出し合うと聞き、選挙プロ記者は取材に向かった。
学生たちからは、まず、「住民票を移す必要性を感じられない」とか「手続きの方法がよくわからない」などの指摘があがった。やはり、住民票は若い人たちにとって身近なものではないようだ。
次に、3つのグループに分かれて、具体的にどうやって住民票の異動を呼びかけていくかの話し合いが行われた。
「住民票を移すメリット・デメリットをわかりやすく」伝えた方が効果があるのではないか。「住民票を移さないと困るケースを紹介する」そして「法律違反になることを強調する」ことが有効なのではないかという意見が出た。
どういった方法で、学生たちにアプローチできるかについてもアイデアを出し合った。
「入学時の書類に、チラシを入れて住民票を移してもらうよう訴える」
「住民票の異動を呼びかけるクリアファイルを作って、学生に配る」
「CMを作って、保護者にも訴える」
そして最終的に、入学シーズンにあわせてチラシを作って配っていこうという、アプローチ第一弾の方針が決定した。
松山市選挙管理委員会の大隅哲平さんは、「『住民票を移さないと、住んでいる自治体で投票できない』という知識が若い人にはないことを、改めて実感した。来年度からは、入学式や成人式など機会を見つけて、住民票を移すようさらに呼びかけていきたい。」と話していた。
大隅さん
多角的に対策を
松山市のような各自治体はもちろん、総務省も対策に力を入れ始めている。卒業シーズンにあわせて、高校3年生に進学で引っ越しをしたら住民票を移すよう、各都道府県に周知を依頼した。
また、大学や短大などでも、入学生に啓発しようという動きが各地で広がっている。保護者の理解が欠かせないとして、保護者向けに郵送している機関誌で住民票の異動を呼びかけることを検討している大学もある。
住民票を移していなかったから、投票したかったのにできなかったなんて、もったいない。若者の投票率UPに向け、まずは住民票を異動してもらおうと、それぞれの試行錯誤は始まったばかりだ。